前回、インコのご飯の種類についてご説明しましたが、
いかがだったでしょうか?まだ前回のコラムを読んでない方はこちらも読んでください。
今回はインコの成長にあったご飯の与え方・与えてはいけない食べ物、鳥にとって重要な栄養素などについて説明していきたいと思います。
1.雛の餌について
鳥が雛のうちは挿し餌を与えてあげる必要があります。
そもそも挿し餌とはペースト状の餌のことを指します。
セキセイインコの雛の場合、生後約3週間の間です。
その後、約1ヶ月経過すると中雛(生後1ヶ月〜5ヶ月)になります。
この時期は一人餌に切り替えていく時期です。
切り替えは、いきなり挿し餌を止めるのではなく、少しずつ減らしながら自分の子にペースに合わせましょう。
挿し餌に必要なもの・作り方・与え方は以下のようになります。
【挿し餌に必要なもの】
・餌(粟玉・パウダーフード)
・お湯
・スプーン
・温度計
【挿し餌の作り方】
①あわ玉・パウダーフード(あわ玉2割・パウダーフード8割)を用意し、お湯で混ぜる
②温度計で測りながら、40℃ぐらいまで冷ましてから与えてください。
『与え方』
挿し餌の与える1回量は満腹になるまで与えましょう。
満腹になると、口を開けて求めてこなくなります。喉あたりの”そのう”という部分も膨らみます。
与える頻度は1日4〜6回です。2〜4時間ごとに”そのう”の膨らみがなくなっていたら餌をあげましょう。また空腹になると、必死に鳴きます。この時も餌を与えるタイミングです!
中雛になり、一人餌に切り替えていくときは、粟玉やペレットなどを床や小皿に撒き餌として置いておき、挿し餌の回数や量を徐々に減らしてきます。
一人餌はその名の通り、自分一人だけで食べられるようになることです。
この時に重要なのが、体重の変化です。体重測定を毎日しながら減ってないかチェックしましょう。
挿し餌を減らしていき、体重が減るようなら、再び挿し餌を増やしてあげましょう。
2.成鳥の餌について
セキセイインコの場合、生後5ヶ月になるとヒナ換羽(とや)が終わり親羽になります。そして性成熟が始まります。
8ヶ月を過ぎると、ペアを求め始めます。身体もまだまだ成長中です。
個体差にもよりますが、10ヶ月あたりになると完全に体が出来上がります。
5~10ヶ月は人間で例えると成長期でもあり雛の頃よりも多くの栄養が必要になってきます。
成鳥の主食は、ペレットやシードになります。
ペレットと、シードの比率はその子に合わせて与えてください。
最終的にペレットだけのご飯になるのが理想的ですが、好き嫌いが分かれるペレットはいきなりたくさん与えても食べないことが多いです。
ペレットに切り替える方法はこちらのサイトに貼っておくので試してみてください。
1回分の餌の量は、
体重に対して約10%です。
1日2回朝晩で与えてください。
ただ与えるのではなく、しっかり食べているかもチェックしましょう。
また、その子や他に与える副食によっても、与える量は変わりますので、定期的に体重測定を行い、肥満にならないように注意しましょう。
3.老鳥の餌について
セキセイインコは6歳、オカメインコでは13歳、ヨウムでは35歳で高齢で、つまり老鳥と呼ばれています。
餌の量は成鳥と同じくらいの量で与えてください。
老化による体力の低下で、シードやペレットを上手く割れない可能性があります。
しっかり割っているか、食べることができているか確認しましょう。また、成鳥の頃よりも『ビタミン』『ミネラル』が不足しやすいので注意しましょう。
栄養の偏りは体力の低下につながりますので、サプリなどで補給してあげましょう。
4.与えてはいけない食べ物
主に与えてはいけない食べ物は、ほうれん草、カタバミなどアクの強い青菜、アボカド、アブラナ科の植物です。アボカドは他の動物と同様に中毒を起こしてしまいます。
また、アブラナ科の植物は甲状腺腫を誘発します。その他にも水分の多い野菜や、果物の与え過ぎは下痢になるので与え過ぎないようにしましょう。
果物の種にはインコにとっての 毒成分 になる物もあります。特にりんごの種 、 イチゴの種 、 ももの種 、 アンズの種 、 ビワの種 などは、絶対に与えないようにしましょう。
また、人間の食べ物を与えてしまうと塩分・脂肪分・糖分が過多になってしまうのでなるべく控えましょう。
【与えてもよい食べ物】
上記の与えてはいけない食べ物に注意した上で、与えても良い食べ物は
小松菜、春菊、サラダ菜などのキク科、チンゲンサイ、ダイコン菜、ニンジン、ブロッコリーなどがあります。この野菜はビタミンAが豊富です。
※野菜を与える時は水を張って菜さしにさして、こまめに水を取り換えましょう。
ビタミンを摂取する事で病気を防ぐことができます。
他にもビタミンB1、ビタミンDなども摂取しないと様々な病気にかかってしまいます。
そのため野菜だけでなく、サプリなどを併用することで満遍なくビタミンを摂ることができます。
5.鳥の重要な栄養素
鳥の餌で注目していただきたいのはタンパク質、カルシウム、ビタミンです。
これらの栄養素は鳥の健康に必要不可欠です。これらはしっかし摂取することで、なりやすい病気を防ぐことが可能です。次に、それぞれの栄養素が不足した場合や必要量について解説していきます。
【タンパク質】
タンパク質は特に換羽期や発情期に必要な栄養素です。健康な羽を作り出す原料にもなります。
不足するとくちばし形成不全、発育不全、繁殖障害、体重減少、羽毛障害、免疫力低下を引き起こします。
特に換羽期の時期はストレスを感じやすく、強く負担がかかると羽に「ストレスライン」という線が入るように見えたりすることもあります。
では、タンパク質はどのくらい摂取すればいいのでしょうか?
成鳥の1回分の飼料中に10 %前後の動物性タンパク質が必要です。
つまり、体重×10%=1日1回分の食事量
1日1回分の食事量×10%=1日1回分の食事タンパク質必要量になります。
例)
体重35gのセキセイインコ
35g×10%=3.5g
3.5g×10%=0.35g
よって1日の必要タンパク質量は0.35gとなります。
ただし、幼鳥期や換羽期、繁殖期の場合ですと20%以上のタンパク質が必要になります。
タンパク質補給としては、ミルワーム、アワ玉、茹で卵やペット用煮干し(塩抜き)で摂取する事が可能です。しかし、先ほどご紹介したミルワームなどはどれくらいタンパク質が含まれているか気になりますよね。
一回分のタンパク質量を0.35gと考えた場合、表にまとめた結果以下の通りになりました。
項目 | 100gあたりのタンパク質 | 1回分の項目の必要摂取量 |
---|---|---|
ミルワーム | 50g | 0.7g |
アワ玉 | 10.5g | 3.33g |
煮干し(塩抜き) | 65g | 0.53g |
ゆで卵 | 13g | 2.69g |
※表の見方
1回の餌で乾燥ミルワームを0.7g摂取すると0.35gのタンパク質を摂取することができる。 (乾燥ミルワームは正確なタンパク質のデータがないため平均して調べました。購入した際は裏の栄養表示をよく見てご確認をお願いします。)
【カルシウム】
雌鳥で一番重要な栄養素です。発情期の子は特に注意が必要です。不足すると、クル病、卵詰まり、卵殻の軟化による産卵障害の原因になります。カルシウム補強する方法としては、ボレー粉、イカの甲(カトルボーン)、ペット用煮干し(塩抜き)などを摂取させます。シード食のみ与えている方は不足しがちな栄養素なので積極的に補うようにしましょう。 先ほど説明した中で「ボレー粉」に関して一つ注意していただきたいのが、そのまま与えてはいけないことです。理由は、塩分や不純物が多く含まれているからです。与える際はざるに移して軽く水ですすぎ、熱湯で煮沸消毒をしてください。濁りがなくなるまで水で洗浄→煮沸を繰り返し、最後に乾燥させてから与えてください。
【ビタミン】
ビタミンは様々な代謝に関わり鳥の健康、病気の予防に重要です。
代表的な症状として、ビタミンDの不足による脚の変形、クル病(骨の軟化による歩行困難)や、粟玉ばかり与え続ける事によるビタミンB1欠乏症が挙げられます。その他にも、目の周りが腫れたりするビタミンA欠乏症など不足することによりさまざまな症状を引き起こします。欠乏症にならないためにも、緑黄色野菜やサプリメントなどでビタミンを補いましょう。
いかがだったでしょうか?今回は雛・成鳥・老鳥の餌、与えてはいけない食べ物、食事バランスのついてご紹介しました。記事の中で疑問・質問がありましたらお気軽に動物病院へご相談してください。
相模台動物病院 看護師 佐藤